氷のまなざしの向かう先
そんな目を向けられたのは久しぶりで、もっと言うとこの学校に入ってからは初めてのことだったので俺も特に何も考えずに見つめ返した。
「ちょっと、アンタまじまじ見すぎ」
「おふっ、姐さん今はやめて!わたしの今日のお昼ごはんが落ちるっ」
「ごはんより頭の心配しなさいよ」
「ひどい!今日は激戦を乗り越えて珍しく購買の濃厚卵プリンをゲットしたんだよ!落ちてぐちゃぐちゃになったら姐さんのせいなんだからね!?」
バシッとアユがその子の頭を叩くと、その子は腕から落ちそうになった袋を慌てたように抱え込んだ。
むっと唇を尖らせた子は俺の存在を忘れたようにアユにキャンキャンと何かを言っていて。
それを片手であしらうアユの表情は玩具で遊ぶ子供のように満足した表情をしていた。
「たく、ちょっと落ちつきなさい。ほら、これがアンタが気になってた相原 玲(あいはら れい)よ」
「えっ!!?」
ガバッとアユの言葉に振り向いた子は驚愕の表情を張りつけて俺を見た。
丸い瞳が更に丸くなる。
俺はなぜそんな顔をされなければならないのかわからずに黙ったままだった。