理-kotowari-
プロローグ
「またひとり、天使が行方不明になりました」
天界の神殿に、上位に点在する二人の神がいた。
銀色に輝く髪に、珊瑚色の瞳をもった少女が、ある男へ訴えかけるように言う。
瞳は光を通さない。
彼女は続ける。
「昨日も、その前もずっとです。だからわたしは捜査を開始しました、少し前に。それで…」
男は遮る。
「それで僕を疑うって?」
少女は言葉を返さない。
これだけのことをたった1人にわざわざ報告しに来たのだから。もし疑うのではなければ、こんな所には来ないだろう。
だから男は続けた。
「もしそうだったら?」
少女は言葉を返さない。
「もし僕がそれの容疑者だったら?君はどうする?」
あなたを無に帰して神王の座を譲ってもらう、と告げ、すぐにでもこの状況を丸く収めたかった。
もう犠牲は出したくない。
しかし現実は言うことを聞いてはくれないだろう。
なにせここは神王主権なのだ。太刀打ちは許されない。だから彼女は歯向えないでいる。
「まあいい、もう答えは見えているんだろう?」
見えている。
だから今この場所にいる。それに今までの会話で男は否定的な話を見せなかった。
それから少女は一礼した。
神でありながら、妖艶な瞳をもった悪魔に捧げて。
少女は部屋を後にした。