窓際の山河くんの隣は。

イライラする。
山河くんを悪く言われると、無性に腹が立った。

何も知らないくせにそんなこと言わないで。


「お母さんにとって私は一体なんなの……?」


家に居ても息苦しい。
私が私で落ち着いて居られるのは、山河くんの前だけなのかもしれない。

そう思うと、また苦しくなった。

さっき山河くんに触れられた部分がまだ熱い。

“行かないで”
彼の悲しそうな顔が頭から離れなかった。



「……」

ふと、棚に綺麗に片づけられている画材に目をやった。

昔からずっと好きで描いていた絵。
絵に自信はないけれど、描いている時が一番楽しかった。

勉強に集中するために、もう絵は当分描かないと決めていたけれど……
むしろ、お母さんにやめろと言われたんだけど。


今、無性に絵が描きたくなって棚に手を伸ばした。
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