窓際の山河くんの隣は。

「私は、勉強しなきゃいけないから」

自分のことを誰かに話すのは初めてかもしれない。

家での息苦しさを、誰かに分かってもらおうなんて思ってないけれど、愚痴れる誰かが居たらと、ずっと思っていた。


「なんで?」

「お母さんに期待されてないから……私ポンコツで、妹とは違って何にも才能が無くて。唯一できることが勉強だから」


小さいころに妹と一緒に始めたピアノ。
妹の方がどんどんと上達していって、でも私はどんなに努力をしても上手にはなれなくて。

私にないのは才能だった。

才能のあった妹はコンクールに出ても毎回賞を取っていた。
それに比べて私は、何もない。

私はそんな妹に置いて行かれ、挫折し、中学校でピアノを辞めた。

ピアノだけじゃない、習字だってバレエだって色んなことを習わされていたのに、私は何一つうまくいかなかった。

唯一できたのは、勉強だったんだ。


< 45 / 91 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop