窓際の山河くんの隣は。
「私は、勉強しなきゃいけないから」
自分のことを誰かに話すのは初めてかもしれない。
家での息苦しさを、誰かに分かってもらおうなんて思ってないけれど、愚痴れる誰かが居たらと、ずっと思っていた。
「なんで?」
「お母さんに期待されてないから……私ポンコツで、妹とは違って何にも才能が無くて。唯一できることが勉強だから」
小さいころに妹と一緒に始めたピアノ。
妹の方がどんどんと上達していって、でも私はどんなに努力をしても上手にはなれなくて。
私にないのは才能だった。
才能のあった妹はコンクールに出ても毎回賞を取っていた。
それに比べて私は、何もない。
私はそんな妹に置いて行かれ、挫折し、中学校でピアノを辞めた。
ピアノだけじゃない、習字だってバレエだって色んなことを習わされていたのに、私は何一つうまくいかなかった。
唯一できたのは、勉強だったんだ。