窓際の山河くんの隣は。

「家に帰ったらね、お母さんにあんたは勉強しかないんだから頑張るしかないでしょって言われるの」

「……」


何も言わないで静かに聞いている山河くん。
ごめんね、こんなこと聞きたくないよね。

けれど、心の中に色んなものが溜まっていた私は、どんどん口から言葉が出てきた。


「妹はね、逆にあんまり勉強ができなくて。だから余計にお母さん私に期待しちゃって。けど、その期待が私には重くて……そんなに好きでもない勉強をなんで私は一生懸命頑張ってるんだろうってたまに思うんだ」

「絵が、あるじゃん。笹本の才能」


さっきまで黙っていた山河くんがやっと口を開いた。


「ううん。絵はただの趣味なの。それでいいの。好きだけど、それで将来役に立つとは思えないし。……それに、才能がないって言われるのが……怖いの」


絵が好き。
ただそれだけの気持ちでよかった。

才能が無い、だなんて言われたらもう絵を描くこともやめてしまいそうで、とてつもなく怖かった。
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