窓際の山河くんの隣は。
どうしよう。
家に帰りたくないし。
かと言って、集中して勉強できる場所は図書室以外にはないし。
「――あ」
私は急にあることを思いつき、自分の教室へ戻った。
ドアを開け、ある一人の生徒に近づいた。
「山河くん」
山河歩くん、私と同じクラスの男子。
いつも、寝ているか、本を読んでいるか、外をずっと眺めているか。
そんな山河くんに喋りかけるのは、今日が初めてだった。
席替えをしたとしても毎回誰かに席を変わって貰って
窓際の席に座り、休憩時間もあまり誰とも話さない。
そんな彼はいつしか“窓際の山河くん”。
そうクラスの中で呼ばれるようになった。