窓際の山河くんの隣は。

「俺、昨日笹木にひどいこと言った。ごめん。なんか、苦しそうな笹木見たら、母さんのこと思い出しちゃって……俺やっぱ弱いままだよな、変わってない。最低だよ」

「ううん、そんなことない。私に全部話してくれて、うれしいよ。」


ギュッと山河くんの手を握りしめた。

山河くんもそれに応えるように、力強く握り返してくれた。



そのまま二人で手を握りしめたまま、ベンチに座って、海を眺めていた。

落ち着く、ずっとこのままで居たい。
家になんか帰りたくないし、学校にも今戻ったらサキ達に絶対問い詰められるし、サボったも同然だから先生にだって怒られるし。

そう思った私は、


「もう、なんだか帰りたくないな……どこか遠くへ行っちゃいたい気分」


冗談交じりに笑いながらそう言った。
そしたら、

「じゃあ、行こう」


また、私の手を引っ張って走り出した。
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