窓際の山河くんの隣は。

「ごめん、ありがとう。もう落ち着いた」

個展を出て、外のベンチに座って、大きく深呼吸をした。


「ありがとう、山河くん」

私がそういうと、彼は優しく微笑んだ。


もう、本当に山河くんに心が動かされっぱなしだ。
この人って、本当にすごいなあ……


「あ、電話きた。学校から」

「え?!」


あ……そっか、今って学校サボってるってことになってるんだ。
なんだかそんなことも忘れてた。


「出ないで!!」

私は思わず大きい声を出して、携帯を持つ山河くんの手を止めた。


「出ないで……まだ、ここに一緒に居たい……」


うつむいて小さく遠慮がちにそう言った私に、山河くんも小さな声でわかった、と優しく返してくれた。


山河くんに電話がかかってきたってことは、私にもかけたはず。
電源を切ってるから何もわからないけれど。

ああ。
お母さんも私がサボってること知ってるんだろうな。

帰ったらすごく怒られるだろうなあ……
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