窓際の山河くんの隣は。
「ご、ごめん、山河くん」
「よし!帰ろう!お前の母さんも心配するだろうし」
謝る私の方なんか見ずに、無理して笑顔を作る山河くんの顔を見ると、胸が痛くなった。
嫌じゃなかったのに。
決して、山河くんと……キス、をすることが嫌なわけじゃなかった。
むしろ、ドキドキしてどうにかなってしまいそうだったし、何より私は山河くんのことが好き。
嫌な訳がない。
けれど、それでも少し怖かった。
私たちのこの旅は、ただの“オトナごっこ”でしかないのに。
「うん、帰ろう……」
私たちは、駅に着くまで、何も会話をしなかった。