ツレない彼の愛し方【番外編追加】
01
「ひーびーきー!なんでオレの言う事が聞けない!どうしてココのデザインがこうなってるんだ。直せって言ったよな?」
早瀬の声が事務所に響き渡る。
「これからクライアントに見せる案だから何点かあっても良いって言ったじゃないですか!」
少しくらい主張させてもらおう!
「はぁ?お前、この前の打合せで話し聞いてたのかよ。ここのコンセプトはお前のデザインは合わないって結論が出ただろう」
少しでも早瀬に近付きたい。
仕事でも人間的にも認めてもらいたい。
だからがむしゃらに頑張る。
「私は反論しましたよね?どちらも見せて、先方に判断してもらいましょうって。チャンスを下さい。こっちの考えも提案してみたいんです。社長~!
と、「社長~!」の部分を鼻にかけて甘えた声で言ってみた。
「ココで女を使うな。普段は色気はないし、フェロモンなんて見えないくせに。フン!」
と言いつつも早瀬はしばらく腕を組み、私のデザインを見ていた。
他のデザイン案を否定する訳じゃない。
けど、クライアントの話しを聞いているうちに、違った角度から見たデザインを提案したくなったのだ。
ココでボツになっても、いつか表に出せるんじゃないかと思えると早瀬に食い下がる。
早瀬はひとつ、ふたつ質問をして来た。
それに的確に応える。
「ふ〜」とひとつため息をつく早瀬。
「わかった。案として持っていけ」
「やった!社長!ありがとうございます」
私はとびきりの営業スマイルで早瀬にお礼を言う。
「そう言う顔は外でやってくれ。内部やっても仕事は取れないからな。それに案として持って行くだけで、お前のデザインはおまけだ」
憎たらしいことを言いながらも、満足気に目尻を下げている。
少しずつでいい。早瀬に認めて欲しいだけ。