ツレない彼の愛し方【番外編追加】



朽木くんともう一人いた男性はお兄さんだったんだ。
お父さんは、お母さんを良子さんと愛おしそうに呼ぶ。


そんなお父さんのズレた行動から始まった早瀬と綾乃さんのお見合い話の経緯。
早瀬の心の葛藤や姉兄弟たちとの距離の置き方のすれ違い。
その距離を縮めようと諭す姉兄。
私がいつも見ていた自信の中に垣間見えていた早瀬の孤独。
それが今なんとなく理解できる。


血のつながらない父親と姉、兄、そして半分だけ血のつながった弟。
自覚の無い疎外感を家族に距離を置くことで解消していたのかもしれない。
しかしそれを家族は放っておかなかった。
どこかでその距離をいつも縮めようとしていた家族。
そのきっかけとなったのは…私の妊娠だった。


家族との話が終わって、この家にいた頃に使っていた早瀬の部屋。
ベッドには淡いブルーを基調としたカバーがキレイにのり付けされている。
そこで勉強していたのだろうと思える机の横には建築やデザインの本で埋め尽くされている本棚。本棚を背に二人掛けのソファとローテーブル。
二階に位置するこの部屋の窓からは、手入れされた芝生の庭が見下ろせる。


さっきから黙っている早瀬に居心地の悪さを感じ早瀬に背を向けたまま、窓の外を見ていた。しばらくするとカサっという衣服が擦れる音がした。早瀬が動いたことがわかると同時に後ろから早瀬の腕が私の身体を包み込む。
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