ツレない彼の愛し方【番外編追加】
「響…」
すぐ後ろに早瀬のぬくもりを感じる。
耳元で囁く低い声がやたら憎らしくて、とてつもなく恋しくて泣きそうになる。
何か言葉を紡げばきっと泣いてしまう。
反応のない私をもう一度早瀬が呼ぶ。
「響」
愛おしいその声。
「…ごめん・・・一人にして・・・
淋しい想いをさせて…ごめん」
普段こんなにたどたどしく言葉を紡ぐ早瀬を知らない。
「響…不甲斐ない俺に幻滅してるよな…ごめん」
こんな弱々しい早瀬を見たことがない。
今まではずっと自信満々で強気でどこか強引だったツレない早瀬が弱音を漏らしている。
ああ、この人はずっと抱えて来た淋しさや孤独があったんだ。そう思ったらボロボロと涙が溢れた。
「響?
泣くなよ…泣かないでくれ...こっち向け・・・・」
こんな時でも出てしまう命令口調に頬がゆるむ。
後ろから抱きかかえていた私の身体をクルっと自分の方へ向けた早瀬が困ったような顔で私を見ていた。
「ごめん…響、もう一人にしないから。これからずっとそばにいる。淋しい想いをさせないから」
ギュッと力強く私を胸に納める。
「社長の…バカ」
その力に抵抗して身体を離し、胸を叩く。
「うん」
それでも力づくでまた胸の中へ納められた。
その瞬間、堰を切ったように零れ出す涙。