ツレない彼の愛し方【番外編追加】


あまりにも予想外の出来事に、手を口に当て動けなくなってしまう。
妊娠してすぐに入籍をしたけど、どんどんお腹が膨らんで来て、あっという間に桜が産まれた。それからは生活が一変して、結婚式のことなんて考えていなかった。


「仕事の調整がなかなかできなくて、遅くなってごめんな」

私の腰をそっと引き寄せ、早瀬がゆっくりと私を抱きしめる。
甘く低い声が耳元で心地良く響く。


「今日、俺たちの結婚式をココで挙げよう」

早瀬が抱きしめていた腕の力を緩め、そのまま私の手を繋ぎ、ゆっくりと教会へと導いてくれた。


中に入るとすぐに控え室に通された。
早瀬は自分の支度があると隣の部屋へ消えて行った。

残された部屋で、すぐに目についたのは正面に吊るされていた真っ白なドレス。
待ち構えていた二人の女性が素早く私のそばにやって来てドレッサーの前に座るように促す。

手際良くヘアとメイクを整え、ブライダル用のビスチェとフレアパンツに着替える。最後に用意されていたドレスに袖を通した途端、二人の女性が感嘆の声をあげた。


「まぁ、素敵。それに奥様のイメージにピッタリだわ!」


デコルテを美しく飾るようにハートシェイプラインになっているフロント。これなら授乳中の胸が目立たない。バックスタイルは印象的なAライン。カットレース刺繍でロングトレーンになっていてヴァージンロードを歩く後ろ姿がきっと美しいだろう…。


「…素敵」


思わず鏡に見惚れて自惚れた声を出してしまった自分に赤面する。


「本当に素敵です!」

女性達がお世辞とは思えないほどの声をあげる。


「ありがとうございます」

気恥ずかしくなって俯いていると、隣の部屋から準備を整えた早瀬が部屋に入って来た。
優雅な歩みが一瞬止まり、早瀬がじっと見据える。





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