ツレない彼の愛し方【番外編追加】
「タイミング悪いな…」
「あ、お取り込み中でした?!」
そんな会話をしながら入って来た男性は…
「修二さん?」
1年前、ニューヨークへ旅立って行った垣内修二さんが立っていた。
そしてその後ろに隠れるように一緒にいた女性は綾乃さん。
「とにかく…中へどうぞ」
早瀬が二人を中へ招き入れた。
「響には言ってなかったけど二人にも式に出席してもらおうと連絡してたんだ」
さすがに式に出席は出来なかったけれど、どうしても逢いたいと訪ねて来てくれたようだった。
立ち話じゃなんだからとソファへ座るように二人を促しながら早瀬が話し出した。
1年ぶりに逢った綾乃さんは柔らかい雰囲気をまとって、あの頃の刺々しい目つきなど想像もできないほどだった。
修二さんがそっと綾乃さんの背中を押して、私の前に立たせた。
コクンとひとつ頷く修二さんは優しい眼差しで綾乃さんを見ている。
視線を修二さんから私に移した綾乃さん。
「響さん…本当に…あの時はごめんなさい。謝っても許して貰えるような事じゃないけれど、どうしても…逢って謝りたかったの」
綾乃さんの瞳には涙がにじんでいた。
1年前のあの出来事は私にとっても衝撃的で忘れようにも忘れられない。
けれど…
何もかも早瀬の大きな愛情に包まれて傷跡は少しずつ時間とともに癒えていっていた。
今では時折、修二さんと綾乃さんはどうしているだろうと思うこともあった。
「本当に…本当にごめんなさい…」
綾乃さんの瞳からは収まりきれない涙がポロポロと流れた。
早瀬はコクンと頷いて私を優しく見ていた。