ツレない彼の愛し方【番外編追加】
「しゃちょ~、まだ行きましょうよ」
と言う岡野をなだめるように永野夫妻が岡野を引っ張って行った。
朽木もそれに付いて行くものと思っていたのに...
早瀬が私を抱えてタクシーに乗った時、最後にすっと朽木くんがタクシーに乗り込んで来た。
咄嗟のことに驚きながら私は後部座席の真ん中に移動する。
朽木くんが声をかけてきた。
「響さんを大丈夫ですか?」
「...うん」
朽木くんの歓迎会なのに本人が帰っちゃていいのかな?と思いながらも車の揺れが気持ち良くてまた睡魔が襲って来た。力が抜けている自然と誰かの温もりに体を預けた。
私を挟んで微かな会話が聞こえる。
「お前、二次会行かなくていいのか?お前の歓迎会だぞ」
「あ~、そうでしたね。すみません。でも社長と響さんがいないとつまらないし。自分も同じところに帰るのに仲間はずれは淋しいし」
朽木くんもあのマンションに住んでいる。
福利厚生の一環として、マンションを社員には特別な家賃で貸している。
と言っても今までは会社の人間は私しか住んでいなかった。
それにしてもさっきの行動は不可解だ。