ツレない彼の愛し方【番外編追加】


席に戻って来ると、早瀬とのやり取りを聞いていた仲間が苦笑いしている。

「響さん、スゴいです。社長にあそこまで食い下がるなんて。私なんて…怖くて出来ないし、そんな仕事バリバリ感いらないし」


席に戻って来るとWebデザイナーの近藤美咲ちゃんにあきれ顔をされる。
彼女の私服はいつも女子力満載。
レースやシフォンの素材にスカートが定番。
ヘアスタイルだって、カタログから飛び出てきたようにカーラーで巻いてあったり、アップしてあったり。
化粧も目元強調のアイライン&つけまつげ&マスカラ。
とにかく手入れが行き届いたイマドキ女子。
あんなにハードな仕事をしていながら、自分にも手が行き届いていると感心すらする。
イマドキだけだったら蹴り倒すところだけれど、彼女の仕事っぷりはオトコ前。
早瀬デザイン事務所で無駄な動きをする人間はいない。



広告代理店から一緒に移って来たも1人のスタッフ岡野遼だって黒縁メガネの奥のつぶらな瞳は、仕事が立て込んでいても穏やかな視線だけ送ってくる。
見た目は草食系の優男だけど、頭脳明晰でセンス抜群である。


私と来たら…
普段はTシャツか白シャツにジーンズが定番。
化粧は日焼け留め程度のファンデーションとリップくらい。
だって…楽なんだもん。


美術大学に入学するために上京した私は、
大学の先輩の紹介で広告代理店のアルバイトをしていた。
雑用係だったけど...

早瀬はその代理店の社員だったが、数々のコンテスト、コンペを総ナメにし、若くして注目される人物になっていた。
女性からも同性からも人気があり、私にとっても憧れの人。
遠い存在で、近付くことなんて無いと思っていた夢のような人。

そんな早瀬が大学時代から経営学を学んで来た永野とその妻・由加里と一緒に独立をするということになり、当時、広告会社で同じプロジェクトにいたアルバイトの私と岡野を引っ張って来た。二人とも大学4年で私は就職も決まっていた。けれど...憧れの早瀬から直々声をかけられ迷わず着いて来たのだ。早瀬デザイン事務所に。

未だに...早瀬がなぜ声をかけてくれたかは疑問だけど。





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