ツレない彼の愛し方【番外編追加】
「朝から兄弟喧嘩するなよ。響、実は二人は…兄弟なんだ。ま、早瀬のお袋さんが再婚して省吾が産まれたんだけどね。僕と由加里は省吾が中学生の頃から知ってるんだ。ちょうど1年前、省吾がここで働きたいと相談に来てね、僕に。この通り、早瀬はいい返事をしないと思ったんだろ?」
省吾に同意を求めると「その通り!」と言わんばかりに頷いていた。
「そろそろ人員を増やしても良い頃だったし、大学でデザインの勉強してるし、僕は入社に賛成したんだ。そこで早瀬を説得したら、しぶしぶOKを出した。
条件付きでね。試用期間は3ヶ月、それまでに実績をあげる。要は何でも良いからひとつの事をやり遂げろと言う条件。響も知っての通り、省吾は1ヶ月でひとつのクライアントの仕事をやり遂げてるからね、認めざるを得なかったって訳。」
永野はニヤリと笑って早瀬を見た。
立ったまま早瀬は郵便物やら書類やらに軽く目を通している。
「で、本採用で良いんだよね?隆にい!」
だだっ子のように朽木が早瀬の顔をのぞき込む。
「会社じゃ口が裂けてもその呼び名で呼ぶなよ。あと、お前はそのまま朽木で通せ。」
そこで初めてわかったのだけど、早瀬の本名も朽木という姓だということ。
母親の再婚で早瀬には血のつながりがない姉と兄がいることも。
早瀬は独立するときから母方の姓を名乗ってるらしい。
早瀬と知り合ってから5年以上も経つのに、早瀬のプライベートを知らなかった。
隠す訳ではないけれど、兄弟と言う事は伏せて仕事をしたほうが都合が良いからということらしいが、早瀬はきっと朽木くんを考えての事だろうと思う。
始めからあの早瀬隆之介の弟だとハードルを上げる必要はないということだった。
「了解~♪永野さん、響さん、正社員になりました!改めてよろしくお願いします。」
「軽いな!」
朽木くんは永野さんに頭を小突かれていた。