ツレない彼の愛し方【番外編追加】


このパーティの為に、この間の休日に美咲ちゃんにドレスを見立ててもらった。
美咲ちゃんの行きつけであるお店で薦められたのは、肩ひもがまったくない、今、美咲ちゃんが着ているドレスと同じような短い丈。
生地が少ない…
そんな危なっかしい洋服は着れません!ときっぱりお断りし、結局、普段、自分が好んで着ている黒いシンプルなドレスを選ぼうとしていた。


するとこればかりは譲れないと、黒は美咲ちゃんに却下!
妥協するのはココまでですからね!と渡されたドレスが今着ているもの。


色はワインレッド。胸元やノースリーブの淵には黒いサテンリボンが縁取られている。
膝丈の長さも落ち着いて見える。
最初にオススメされた心もとない肩ひもなしドレスよりましと試着してみた。
ドレスを着たまま試着室から出て来ると待っていた美咲ちゃんが歓喜の声を上げる。


「きゃ~!響さんキレイ!!!!!」


一緒にいた店員さんもニコニコしている。
ま、これは商売ですから、店員がニコニコしているのは営業スマイルと言えるけど、美咲ちゃんはああ見えても普段から辛口で、お世辞が言えないタイプ。
それにダメな時はダメ出しするだろうから、このドレスはありなんだと思った。


「じゃ、これにしようかな。」

と、二着しか着ないで決めようとした私の顔をまじまじと見て


「本気で言ってます?響さん、たくさん着てどれが自分に合うかじっくり考えることも大事ですよ!もう少し女子力を高めて下さいよ!」


と、怒られた。
それから美咲ちゃんは私を着せ替え人形のようにたくさんのドレスを着せたけど、結局、あのワインレッドのドレスに決まった。

それを今着てパーティ会場のレストランに向かってる訳なんだけど、お店で着ていた時と、なんだか着心地が違う。

着慣れていないのと、こんなヒラヒラした服で街を歩くことに抵抗があるからかな。
それにヘアスタイルも美咲ちゃんがアップにしてくれて首元がスースーするし。
ヒールだって足が一番キレイに見える高さにしましょうって7cmも高さがある。
座ると膝が見えて更に落ち着かないんだよ。
それに胸元がこんなに開いてるなんて。試着してた時と感じが違う。

落ち着かない私を一瞥して

「響さん、いい加減に落ち着いて下さい。良いですか?会場には自分をキレイに見せようと思ってる女性がたっくさんいるんです。だからそれくらいじゃ目立ちもしませんから大丈夫ですって。」


「う・・・ん」


「今日ばかりはどっちが年上なのかわからないな」

と岡野がクスクス笑ってるし。
朽木うんはさっきからじっと私を見ている。
視線に気が付き「なに?」と聞くと照れたように窓のほうを向いてしまった。


もう、どいつもこいつも何なのよ。
と落ち着かないまま、タクシーは表参道のレストランに着いた。



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