ツレない彼の愛し方【番外編追加】

早瀬と私の関係。
ひとことで言えば、上司と部下、そして…
身体を重ね合う男と女。ただそれだけ。


早瀬デザイン事務所は自社ビルの1階に事務所を構えている。
この7階建てのビルは1階は店舗や事務所が入る商業スペース。
2階から7階が居住スペース、つまりマンションになっている。
早瀬の父親が所有しているビルだ。最上階の7階には一部屋のみ。
そこが早瀬の住まい。


他の居住スペースは一般の住人がいるが、響もそのマンションに住んでいる。
毎日遅い仕事なら近いところが良いと、入社当初から事務所の上に部屋を借りている。
同期の岡野はプライベートが無くなると、マンションには住まなかった。


午前1時。
さっきまで仕事をしていた事務所から自宅の6階に上がってきた。
今日の仕事は、とりあえずキリの良いところまで終わらせて来た。
シャワーを浴び、セミロングの髪の毛をザッとドライヤーで乾かすだけでベッドに入った。
連日のハードワークで身体が興奮状態なのか、なかなか寝付けない。
寝返りを何度も繰り返しているうちに玄関の鍵が開く音がした。
チェーンはかけていない。

聞き慣れた足音、部屋に漂う空気感、目を閉じていても誰が来たかすぐにわかる。
そもそも合鍵で入って来る人はひとりしかいない。


早瀬隆之介(はやせりゅうのすけ)



グラフィックデザイナーとして私を育ててくれた恩人でもあり、早瀬デザイン事務所の社長でもある男。

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