ツレない彼の愛し方【番外編追加】
マンションのエレベーターに乗ると早瀬は6階のボタンしか押さない。
早瀬がみつめるとは「うん」とだけ頷いた。
そのまま部屋に来ると言うサイン。
部屋へ入った途端、早瀬がむさぶるように唇を重ねて来た。
それに応えるように私も求め返す。
いつもより強く激しく。
「響?」
早瀬が心配そうに唇を離す。
離れたくない。
言葉にできない気持ちをストレートにくちづけで伝える。
戸惑っている早瀬を見ないふりして。
こんなにも無我夢中で自分から求めたことなんて一度もない。
早瀬以外の男の人を知らない。
だから早瀬から教えて貰ったことしかできないし、私の身体は早瀬がすべてだった。
なのに今日は気持ちが抑えられず、壊れそうな心をそのまま早瀬にぶつけた。
「響…なんかあったのか?」
唇を少し離して、早瀬が心配そうにつぶやく。
俯いて、ただ首を横に振る。
「お前、今日、おかしいぞ。」
泣きそうになるのを我慢して、衝動的に自分から早瀬の唇を求める。
もしかしたら、終わりがやってくるかもしれない。
悪い予感が一瞬頭を過る。
泣き顔にならないように自分からもとめて快楽に溺れてしまおう。
そうすれば今だけ何もかも忘れられるはずだ。
早瀬を見る綾乃さんの目も、絡めた腕も、修二さんが言っていた言葉もすべて。
自分でも止められないほど、早瀬を求めた。
いつもは理性が伴ってしまうような行動もすべて取っ払って。
今は自分だけの早瀬隆之介でいてほしい。
いつの間にか主導権は早瀬に持って行かれ、二人は何度も何度も快楽の底へと堕ちていった。