ツレない彼の愛し方【番外編追加】


夕方、予定通り早瀬は綾乃さんのレストランへ視察に出掛けて行った。
なんか…苦しいかも。モヤモヤする。
早瀬が出掛けてから落ち着かない心。


ダメだ、私。どうしてこんな風になっちゃったんだろう。
急ぎの仕事はない。キリも良い。
職場にいると早瀬が戻って来ることを気にしてまた胃がキリキリと痛んで来る。


「帰ろう。」

ガタっと席を立ち、「先、帰るね。お先に失礼します。」とだけ言って会社を後にした。


そのまま自宅に向かう。
玄関に吊るしてある垣内部長のジャケット。


「返しに行こう。」

早瀬が綾乃さんに逢っている日に、私は垣内部長に逢う。
どこへ向かっている抵抗かわからないけど、なぜかこの行動で自分のモヤモヤを解消することにした。

渡された名刺。
垣内部長の携帯番号へ電話をかけてみる。



「はい、垣内です。」


「もしもし…早瀬デザインの進藤です。」


「あっ、響さん?やっと電話してくれたね。嬉しいな。」


申し訳ないけれど、垣内部長のおしゃべりに付き合う気分じゃない。
それに出逢ってすぐに彩乃さんの為に早瀬と別れて欲しいと言って来た男だ。
何を考えてるかわからない。
用件だけを手短に伝えた。


「お借りしたジャケットをお返ししたいんですけど、これからお伺いしてもよろしいですか?」


「ああ、あれね。いつでもいいのに…今日、これからだと8時過ぎしか時間が空かない。それでも大丈夫?」


「はい、私は大丈夫です。どちらへお伺いすれば?」


「僕の職場…あっ、ホテルじゃマズいかな?」


「・・・大丈夫です。ロビーのカフェラウンジでお待ちしています。」


「わかった。じゃ、あとでね。」


いつの間にかラフな話し方になっていた垣内部長だなと感じながら、
さほど気にもせずに電話を切った。



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