ツレない彼の愛し方【番外編追加】
エレベーターの前を横切る見覚えのある二人の男女。
それは早瀬と、早瀬の腕をそっと掴んで隣に寄り添う綾乃さんだった。
(どうして?レストランの視察だったはずなのにどうしてココにいるの?)
突然の事に二人を凝視してしまった。
その視線に気が付いたのか、早瀬の顔が横を向き目が合った。
「あっ!」と声が聞こえたのかもしれないし、口の形だけでそう思ったのかもしれない。
早瀬の驚愕した顔を残したままエレベーターの扉はスローモーションのように閉まっていった。
目眩と動悸が同時に襲って来る。
足下がふらつく。しっかりしなきゃ。
「響ちゃん?!!」
気が付けば部長に抱えられていた。
「すみません。」
声になっているかもわからない。
自分で立とうとしても力が入らない。
「少し休もう。」
意識が朦朧として部長の声も遠く感じながら、抱えられたまま、意識がなくなった。