ツレない彼の愛し方【番外編追加】
暖かい手。誰かが私の頬をそっと撫でている。
早瀬の手?でもなんとなく違う気がする。
「ん・・・社長?」
「目が覚めた?」
「あ?!垣内部長!!」
「気分はどう?念のため、医者に診てもらったから。少し貧血みたいだけど、特にどこも悪くないって。でも目眩が続くようなら病院に行ったほうがいい。なにか心配事でもあるの?」
部長が少し不機嫌に問いかける。
「いえ・・・」
私は小さな声で答える。
「とにかく今夜はここで休んでいきな。食事はまた。」
「ここは?」
「僕の部屋。ホテルの一室を僕の仕事場として与えられてるから。」
「今、何時ですか?」
「12時過ぎだよ。」
「えっ?私、帰らなきゃ。」
ベッドから立とうとした瞬間、また目眩が起きた。
「あぶない!」
そういってまた部長が私を抱き抱える。
「僕の話を聞いてた?しばらくは安静にして。貧血を起こしたんだよ。あれから4時間近くも眠ってたんだ。食事もろくに取ってない人が、そのまま動いたらまたどこかで倒れるよ。」
「すみません。」
咄嗟に離れることもできず、部長に抱えられたまま、またベッドに腰を下ろす。確かにまだ頭が朦朧としている。手足の力が入らない。
でもハッキリ覚えているのはエレベーターの扉が閉まる瞬間に見た早瀬の顔。
どうして?
どうしてこのホテルにいたの?
ああ、そうか…早瀬はこのホテルに泊まっているのかもしれないんだ。
綾乃さんと。