ツレない彼の愛し方【番外編追加】
また動悸がして、呼吸が苦しくなる。
「はぁ、はぁ、はぁ・・・」
「響ちゃん?」
涙がこぼれた。
「どこか痛い?気持ち悪いとか?」
部長が慌てて私の顔をのぞき込む。
「胸が・・・胸が苦しいんです。」
「はぁ…
やっぱり早瀬さんと綾乃を見たんだね。」
「はい・・・」
涙がボロボロとこぼれた。
気持ちと体が弱っているから、もう止まらない。
部長は私が泣きやむまで、そっと背中をさすってくれていた。
「部長、わかってたんですか?」
「響ちゃんがエレベーターに乗る前に二人がホテルに入って来るのを見たよ。」
「だから先にエレベーターに乗せたんですね。」
「あれはレディファーストだよ。それに...」
と笑っていうけれど、きっとあの二人と鉢合わせしないようにと思ってやったに違いない。
「ホテルは泊まるだけの場所じゃないよ。会議をしたり、食事をしたり、お酒を呑んだり...」
きっと慰めてくれているんだろうけど、あんな時間に会議などあり得ない。
どうしてもネガティブな想像だけがグルグルと回ってる。
「とにかく今は何も考えないで少し眠った方がいい。響ちゃんと出逢った日、綾乃のために早瀬さんと別れてなんて失礼なことを言った罪悪感も少しあるんだ。あのときは勝手なことを言ってごめんね。何も考えてなかった」
しばらく私の顔を見てフッと微笑みながら
「僕はあっちのソファで休んでるから。何かあったら声をかけて。」
そういって私の頭を撫で、寝室から出て行った。
さっき思い切り泣いて疲れてしまった。
無意識に頭に残る光景を無理矢理追い出していたはずなのに、ふとした瞬間にまた思い出して涙がこぼれる。それを繰り返していたら、いつの間にか眠りに落ちてしまった。