ツレない彼の愛し方【番外編追加】


「ここは?」

修二が連れて来てくれたお店は日本料理のオーガニックレストランだった。
オーガニック野菜のせいろ蒸し、大根おろしで食べるれんこんハンバーグ、ゆずのシャーベットなどどれも目が欲しがっていたのに…


食べ物を口に近づけた時、吐き気をもよおしてしまった。
慌てて手を口に当てる。


「響ちゃん?」

修二の顔が固まっている。



「・・・そうなの?」



「えっ?」



「だから…その……。」

何か言いづらそうな顔を見て思い当たることが頭に浮かんだ。



「…確認していません。」



「…はぁ…。まったく、本当にキミは。」



「すみません。」

不安だった。妊娠しているかもしれないと薄々は感じていた。
しかし早瀬と簡単に連絡が取れなくなった今、どうしたら良いかわからずにハッキリと答えを出すことを躊躇っていた。そんなことをしても無意味なのに。



「すみませんじゃなくて!妊娠していたら、こうしている間にどんどん命は育って行くんだよ。なんで誰にも相談しないんだよ」

さっきまでヘラヘラと笑っていた顔が恐くなった。



「すみません…私、どうしたらいいかわからなく。相談だって誰にしていいのか。会社の人には言えないし、家族にだって…どうしたら…」

今までずっと心の中にあった不安が一気に涙となってこぼれ落ちた。



「僕がいるじゃないか…これじゃ食事もダメだね。行くよ。」

修二は店員を呼び、体調を崩したからと料理を残してしまうことを詫びながら、スマホを片手にどこかへ電話をかけにいった。すぐに戻って来ると私の腕をつかみそっと立たせた。


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