ツレない彼の愛し方【番外編追加】
最初は自分の存在を知って貰いたいと言う衝動から始ったこの時間。
彼女の反応が可愛くて、ついいじめたくなる。
「可愛い従妹のために応援したい気持ちがあるんだけど…。早瀬さんとなかなか進展しないって綾乃がぼやいていたんだ。それが今日のパーティでやっとわかったよ。早瀬さんにとってのキミの存在はだいぶ大きいみたいだね。」
いきなりこんな話しをし出した僕をじっと見ながら向けられた瞳が小さく揺れる。
彼女の動揺が手に取るようにわかった。
綾乃と隆之介さんの話しを出しただけで、そんなに動揺する彼女を、まだ逢ったばかりの彼女をもっとイジメたくなる。
「そこで相談なんだけど、早瀬さんと別れて貰えないかな?」
「えっ?社長と…別れる?」
核心に触れたか?
「ま、付き合ってるって感じじゃなさそうだけど・・・親密な関係には見える。大人のカンケイ?でも将来のことは、何も決まってないみたいだし。」
言ってからすぐに「しまった!」と思った。
彼女の顔が一瞬で表情を消して行ってしまったから。
その後の彼女はおとなしくなり、窓の外をじっと見ていた。
こんなことを言いたかった訳じゃない。
ただ少しいじめて、彼女の中に自分の存在を大きくして欲しかった。
ホテルに着いたらどうやってご機嫌を取ろう。
食事に誘う?それとも酒?
そもそもイジワルをしたいだけで自分の職場に連れていこうとしている。
これから先のことなんてまったく無計画。
その無計画のまま、"職場のホテル"に着いてしまった。
なるようになれ!
と彼女を車から下ろそうと先に降り、ドアを開けるために助手席に回ったけど、彼女は勝手にドアを開け、そそくさと車から降りてしまった。
これまで接して来た女性にはまったくいないタイプでますます興味が湧いて来た。
彼女とじっくり話をしてみたい。
その透き通る肌に触れてみたい。
無計画だった頭の中にどんどん彼女との時間が盛り込まれて行く。
久しぶりに心が弾むという言葉がピンと来た。
しかし、その時にじっと動かずに見ていた彼女の視線の先を確認した瞬間、弾んでいた心が一気にしぼんで行ってしまった。