ツレない彼の愛し方【番外編追加】
あんな騒ぎになって、社長として情けない。
事務所にも行けず、自宅にも帰れない日が数日続いた。
ここは建設会社を経営しえいる父さんが所有している都内のマンション。
以前は仕事部屋として使っていたが、独立してからはほとんど使っていなかった。
幸い、仕事をする環境は整っているからしばらくはココでの仕事になるだろう。
響はどうしているだろうか…
永野は響が少し痩せた気がすると言っていた。
心配だけど顔を見に行くわけには行かない。
綾乃の件を決着をつけなくては。
気持ちを落ち着かせたくてタバコを手に取ると残りはあと1本。
「はぁ…吸いすぎかな」
最後の1本をくわえ、気晴らしに近所のコンビニへタバコを買いに出かけた。
しばらくして部屋に戻って来ると、さっき出かけて行った時と部屋の空気が変わっていたのがすぐにわかった。
玄関には女性物の靴。あきらかに響の物でないとわかっても「もしかしたら」という期待で胸をふくらます。
「響?」
慌ててリビングの扉を開けるとそこに立っていたのは俺のスマホを不自然に置く
「綾乃…」
「あからさまにガッカリするのやめてくれない?やっぱりここにいたのね、スマホも持たないで出掛けてたから、すぐに帰って来ると思って待たせて貰ってた」
勝手に部屋に上がっていた綾乃を見て、眉をひそめる。
昔はきれいだと思っていた綾乃のロングヘアが今は鼻につく。
長い分、シャンプーの香りが際立つからかもしれない。
「何か用か?」
「そんな言い方って...少しは優しくしてくれない?婚約者なんだから」
「誰が婚約者だ!」
「私と隆之介!」
呆れて物が言えない。
「どうしてここがわかった。永野にでも聞いたか?」
「聞かなくてもわかるわよ。隆之介が行く場所なんて…あの頃から何かあるとココに籠ってしまうじゃない。あの頃からドアロックの番号も変えてないのね」
広告代理店で同僚だった頃、お互いの淋しさを埋めるために、身体を重ねていた。綾乃にはずっと忘れられない人がいることを知っていたし、自分はどこか恋愛にさめていた。だから欲求のままに抱きあっていた。綾乃もそれ以上を求めて来なかったし、そういう関係だと割り切っていたはず。なのにどうして今になって。