ツレない彼の愛し方【番外編追加】
05
どこかでこうなることを予感していたんだろうか?
仕事はだいたいを岡野と一緒に進めて来ていた。
私ひとりでやっていた仕事はほとんどケリは付けた。
少しだけ残してしまった物は、週末だけバイトをしている弟の亮介に引き継いだ。
「姉ちゃん?どっか行くの?」
「明日、辞表を出す。ごめんね、亮介に面倒なこと押し付けて」
「俺はかまわないけど、隆之介さんには何も言わないでいいの?」
「うん、いいの…落ち着いたら連絡するよ。まだお母さん達には内緒ね」
「わかった」
「社長に何か聞かれても余計なこと言わなくていいよ」
「言わないも何も…教えてくれないじゃん。俺にだけは連絡してよ」
「わかった。ごめんね」
朝方、私はひとり事務所にいた。
早瀬の机に辞表を置いた。
岡野と美咲ちゃんにもお詫びの手紙を。
永野さんには退職の書類と一緒にお詫び状を…由加里さんへのお手紙を添えて。
自分の机の中身はほとんど片付けた。
パソコンだけがいつものように置かれている。
大学を卒業して、ずっとここで働いていた。
外の世界はほとんど知らない。
ずっとここで働いている自分しか想像が付かなかった。
社長…隆之介さん、夢のような憧れの人、だから夢のように消えてしまうんですね。
でもひとつだけ、あなたから貰った「命」は私の宝物として守っていきます。
ありがとう…