ツレない彼の愛し方【番外編追加】




「お前…初めてだったのか?」


事が終わって早瀬の呼吸が整い始めた時、やっと自分が何をしたのかわかったように、早瀬は少しの罪悪感を顔に写し出した。
私は何も答えなかった。けど…すぐわかるよね。
経験豊富な早瀬なら。



高校は女子校だったし、美術部で絵ばかり書いていた。
大学に入ったら、ご存知の通り、忙しい仕事のバイトを始めてしまって彼氏を作る余裕すらなかった。
いや、すでに早瀬の存在が大き過ぎて彼氏が欲しいとは思わなかったんだ。


初めて早瀬に抱かれた夜、違和感があり動けない私の身体を罪悪感からか早瀬はそっと抱き寄せてくれた。
私は早瀬の胸に顔をうずめて、嬉しさとせつなさの混ざった涙を心の中で流した。


実際には泣いていない。
ヴァージンだったというだけで重荷のはずなのに、ここで涙を流したら、もっと重い女だと思われる。
そうしたら、もう次はないはず。
だって早瀬の周りには、そう言う関係の女性が何人もいるのだから。


次は…。


期待してしまう自分に自嘲する。
次なんてあるんだろうか?
早瀬はただ酔って過ちを犯しただけかもしれないのに。
ただの気まぐれなのかもしれないのに。

しかし私の予想に反して、この日を境に早瀬がたびたび部屋にやってきて、私を求めるようになった。
それは決まって酒を呑んでいるときだった。


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