ツレない彼の愛し方【番外編追加】


目が覚めるとベッドだった。
心配そうな和泉さんが顔を覗き込んでいた。



「響ちゃん、気が付いた?」

ぼんやりと見える和泉さんの顔。
少しホッとしたような表情に見える。



「ちょっと待っててね、先生を呼んで来る」

そう言ってバタバタと和泉さんは部屋を出て行った。
数分後、斉藤先生と和泉さんが戻って来た。



「顔色は良くなったね」

と、先生が脈拍と血圧を計りながら優しく微笑む。
和泉さんにもアイコンタクトをして小さく頷いた。
その雰囲気は暖かくて、優しい空気が漂う。素敵なご夫婦なんだなと思ったら、また泣けて来た…



「響ちゃん…ひとつだけ聞いてもいい?」

そう言って和泉さんはゆっくりと私のベッドに腰を下ろした。



「隆之介さんって早瀬隆之介のこと?」



「えっ?」



「うわ言で何度もその人のことを呼んでいたから。」



「・・・・・。」



「もしかして、その人がお腹の子の父親?」

ハッとした。誰にも…例え隆之介さんを知らない和泉さんにも伝えないつもりでいたから。



「・・・・・。」



「立ち入ったことを聞いてしまったかしら。ごめんなさい。まだ本調子じゃないから、今はゆっくり休んでいて。また様子を見に来るわ」


返事はしなかった。
私にとって小さな衝撃を残したまま、和泉さんが部屋から出て行った。
本当は誰かに認めて欲しかった。誰かに聞いて欲しかった。この子が早瀬の子だって。どこかでそう思っていた。じゃないと、この子と早瀬の繋がりが存在しないことになってしまうから。和泉さんは早瀬の事を知らない。
打ち明けてしまおうか?ただ聞いてくれるだけでいい…。


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