願いは叶う
次の日、学校から帰ってくると体調が悪くて寝ているはずの母がいなかった。


私は、母が家にいないことに胸騒ぎを覚えた。


母の熱は、朝になっても下がっていなかった。


私は母のそばにいたかったが、母に無理をしないでと言い残して、学校へ行った。


二、三日家で休んでいれば、母の体調もきっと良くなると思って。


私はとりあえず制服から部屋着に着替えると、机の前に座り、母の内職を始めた。


地味で誰にでもできる母の内職の賃金は、中学生の私からしてみても安かった。


ちゃんとした月給をもらって生活している人は、私たちの生活をきっと馬鹿にするのだろう。


でも、私たちは……。


私がそんなことを考えながら封筒にチラシを入れていると、電話のベルがけたたましく鳴った。


私は作業の手を休め立ち上がり、受話器を握りしめ電話に出た。
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