願いは叶う
「もしもし、寺田ですが」


「もしもし、あのう、寺田小夜子さんですか?」


受話器の向こう側から大人の男性の声が聞こえてきた。


「はい。

私が小夜子ですけれども」


「ああ、良かった。
やっと電話が繋がって」


「あのう、失礼ですが、どちら様でしょうか?」


「私は、スミレスーパーの川島と言います」


スミレスーパーは、母が働いているスーパーだった。


私は嫌な予感がして、汗ばんだ手で受話器を握りしめた。


「じつは、絹子さんが仕事中に倒れてしまって……。

申し訳ないですが、今から絹子さんを迎えにきてくれませんか?」


私は川島の話を聞いているうちに、胸が苦しくなって、目を閉じた。
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