願いは叶う
夜の九時過ぎ、私が母の内職をしているときに母は目を覚ました。


私はそれに気づくと、仕事の手を休め、母に声をかけた。


「お母さん、目が覚めたの?

具合は大丈夫?」


母は横になりながら、顔を私の方へ向けた。


「ええ、もう大丈夫よ。

熱も下がったんじゃないかしら?」


「無理しないでね。

きっとお母さんの風邪は、一日や二日じゃ良くならないわ」


「でも、仕事が……」


「いいじゃない。

仕事なんて」


私はそう言って、笑ってみせた。
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