願いは叶う
「体調が悪いんだから、仕方ないわ。

風邪が治って、熱が下がったら、また働けばいいのよ」


「でも、小夜子。

それじゃ、小夜子に申し訳ないわ」


「どうして?

お母さん」


「もしも、私の体が丈夫で毎日働けたら……。

もしも、この家にお父さんがいてちゃんと働いてくれていたら……。

小夜子は今ここで、内職なんてしてないわ」


「でも、そんなこと……」


「小夜子がみんなと一緒に高校に通って、好きな服を着て、好きな遊びをして、今とは違ったあなたが、毎日、幸せそうに笑って……」


「お母さん、そんなことないわ。

私は十分に幸せよ」


「嘘よ。

小夜子はもっと幸せになれるはずなの。

せめて他の子たちと同じくらいに」


母はそう言うと、目を伏せて声を詰まらせた。


「小夜子は、少しも悪くないのに……。

小夜子は、こんなにいい子なのに……」
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