願いは叶う
休み時間になると、私の二つ前の席にいる桜井由美に吉村宏美が話しかけてきて、窓から外を眺めていた私にも、二人の会話が聞こえてきた。


「由美ちゃん、夏休みの予定ってあるの?」


「私、夏休みはとっても忙しいの。

毎日、予備校の夏期講習があるし、それとは別に、夜には家庭教師が来るから。

もう、夏休みなんてうんざり」


「せっかくの夏休みなのに、受験生の夏休みはつらいよね」


「何もせずに、のんびり夏休みを過ごせる人がうらやましいわ」


「そんなの無理よ。

いまどき、高校受験と無縁の人なんていないもの」


「そうよね。

誰もが受験勉強ですものね。

でもね、宏美ちゃん。

私にも夏休みの楽しみが一つだけあるの」


「由美ちゃん、それって何?」


「受験勉強を頑張る代わりに、お父さんがタヒチに連れていってくれるのよ。

とってもきれいな場所らしいから、私、タヒチ旅行が楽しみなの」
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