願いは叶う
百合子は、佐々木優子が言った言葉が信じられなかった。


あの女の人……、顔中に包帯を巻いたバケモノが、教室の入り口に立って、今にも教室に入ろうとしているのに……。


あの女の人は手に果物ナイフを握りしめて、冷たい視線を私に送ってきているのに……。


「先生! 先生には、あの女の人が見えないの!

なぜ? どうして?」


百合子がそう言って声を張り上げたとき、顔中に包帯を巻いた女の人が、教室の方へ右足を踏み出した。


すると彼女の右足は、閉まっているはずの引き戸をすり抜け、教室の中に入り込んだ。


百合子はそれを見て目を見開き、ありったけの声で悲鳴を上げた。
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