願いは叶う
暗い空に稲妻が走り、一瞬だけ空を明るくした。


雨はしだいに強くなり、ベランダから窓を叩いている。


雨が強くなるにつれ、あの公園での悪夢が、再び訪れるような気がして、百合子は恐怖を感じていた。


〈 逃げなくちゃ 〉


百合子の膝は、恐ろしさでカタカタと震えていた。


〈 逃げなくちゃ、私、あの人に殺されてしまう 〉


百合子は誰も頼れなかった。


先生も、クラスメイトも……。


顔中に包帯を巻いた女はゆっくりと百合子に近づき、右手を顔の高さまで上げ、果物ナイフを百合子に向けた。


『山村……、百合子……』


地を這うような低い声に、百合子はドキリとして息をのんだ。


『やっと……、見つけた……。

私は……、お前に……、会いたかった……』
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