願いは叶う
〈 逃げなくちゃ 〉


百合子の第六感が、激しく警鐘を鳴らしていた。


〈 逃げなくちゃ。

今すぐに! 〉


百合子は震える足で、一歩二歩と後ずさりした。


顔中に包帯を巻いた女の人の冷たい視線から、百合子は、憎悪と殺意を感じずにはいられなかった。


百合子は、教室から廊下に出られるドアに目をやった。


ドアは閉まっていたが、逃げるならあそこしかない。


百合子は、震える足でヨロヨロと後ずさりながら、廊下へと続くドアに向かった。


『逃がさない!』


低く威圧的な声が、百合子の脳を突き抜けた。


『お前だけは……、逃がさない!』
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