願いは叶う
何かに怯えながら、ヨロヨロと後ずさりする百合子を見て、教室内がざわついた。


百合子はベランダがある引き戸の方を見ながら、そこにある何かに怯えているように見えたが、それが何かを正確に理解しているのは、教室内に百合子しかいなかった。


「百合ちゃん、どうしたの?」


百合子の友だちの矢田朋子が百合子に話しかけたが、百合子には、矢田朋子の言葉に答える余裕はなかった。


百合子が顔中に包帯を巻いた女の人から目を離さずに後ずさりをしていると、百合子の背中が矢田朋子の机に当たり、矢田朋子の机は倒れ、それに足を取られた百合子も、背中から床に倒れた。


百合子は、倒れた拍子に小さな悲鳴を上げた。
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