願いは叶う
「大丈夫?

百合ちゃん」


倒れた百合子に、矢田朋子が心配そうな声で言った。


百合子は倒れたときに背中を打ち、痛さで顔を歪めたが、今の百合子にとって背中の痛みは些細なことであった。


〈 早く逃げなくちゃ 〉


百合子は、矢田朋子が心配そうな顔で自分を見ていることにすら気づかなかった。


〈早く逃げなくちゃ、私、殺される…… 〉


そう思って立ち上がろとした百合子の視界の中に、白いレインコート入り込んできて、百合子は表情をこわばらせながら顔を上げた。
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