願いは叶う
絹子はその日の夜中に、ふいに目を覚ました。


絹子は病室のベットから窓際に置いてあるデジタル時計に目を向け、無意識のうちに時間を確認した。


〈 今が夜中の十一時。

あと一時間で、私の新しい生活が始まる日付に変わるのね 〉


絹子はそんなことを考えながら、ベットから起き上がり、トイレへ行くために病室を出た。


病室に戻り、もう一度目をつぶれば、日の光が差す朝が来て、小夜子が迎えにきてくれると思いながら……。


みんなが寝静まった病院は、物音ひとつせず、絹子が長いコンクリートの廊下を歩く度、絹子が履いているスリッパの音だけが響いていた。
< 295 / 636 >

この作品をシェア

pagetop