願いは叶う
〈 明日は初めて、小夜子たちの家に行けるのね 〉


絹子は、誰もいない病院の長い廊下を足を引きずるようにしてゆっくりと歩き、トイレにたどり着いた。


〈 明日は、久しぶりに百合子に会える。

百合子は、私と会って喜んでくれるのかしら? 〉


絹子はトイレで用を足すと、手を洗うために水道の蛇口をひねった。


〈 小夜子の夫の武士さんは、優しい人だから、私のことを邪魔にせず、大切にしてくれるかしら? 〉


絹子は水道の蛇口を閉め、いつものように蛇口の上の方に備えつけてある鏡に目を向けた。


そして絹子は、鏡を見つめながら凍りつき、思わず息をのんだ。


〈 私の後ろに、人がいる…… 〉
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