願いは叶う
絹子は鏡を見つめながら、自分の心臓がドキドキと大きな音を立てているのを感じていた。


鏡に映る一人の女……。


その女は白衣を身にまとい、長い黒髪で、血色の悪い青白い顔で、身動き一つせず、じっと絹子の背中を睨んでいた。


〈 この人は…… 〉


絹子は白衣の女性が誰であるか気づき、背筋に悪寒が走った。


〈 この人は……、田所光江…… 〉


絹子がその事実に怯えながら鏡に映る女を見ていると、女の目線が少しずつ移動して、やがて、鏡を通して絹子の目線とぶつかった。


絹子は思わず小さな声を上げ、鏡に映る女を見つめた。


鏡に映る女は、絹子のそんな様子を見て、うれしそうにニヤリと笑った。
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