願いは叶う
絹子は、病室に帰ろうかとも思った。


病室に帰り、布団をかぶって、じっと朝が来るのを待てば、小夜子がこの病院にやって来る。


〈 でも…… 〉


絹子は震える手で、自分の胸を押さえた。


〈 不吉な予感がして仕方がない。

今日、この病院で、何かあってはならないことが起きるような気がして…… 〉


絹子は、カタカタと震える膝に力を込めて立ち上がった。


〈 この病院を出よう…… 〉


絹子はまた足を引きずるようにして、ゆっくりと歩き出した。


〈 今日だけは、この病院にいてはいけない。

この病院にいたら、きっとまたあの女がやってくる。

長い黒髪の看護師……、田所光江が…… 〉
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