願いは叶う
病院の長い廊下を歩く絹子の足は、カタカタと震えていた。


〈 早くこの病院を抜け出さなくては…… 〉


絹子はヨタヨタと廊下を歩き、この階の真ん中辺りにあるエレベーターに向かった。


〈 病院を出て、少し歩いたところにあるコンビニに行けば、安心だわ。

コンビニならば、必ず店員がいるし、夜中でも明るいし…… 〉


絹子は、ヨタヨタとよろけるようにしてエレベーターにたどり着いた。


〈 この病院は、危険だわ……。

嫌な予感がする……。

私の退院の前日に、あの女が現れるなんて…… 〉


絹子はエレベーターの下方向に行くボタンを押し、エレベーターが来るのを待った。


絹子がホッとして肩の力を抜き、エレベーター待ちをしていたそのとき、絹子の背後にある階段の方から音がした。


カツーン……。
カツーン……。


それは、コンクリートの階段を誰かが上ってくる足音に違いなかった。


カツーン……。
カツーン……。


その足音が、しだいに絹子に近づいてくる。


カツーン……。
カツーン……。


絹子の中で、不安な気持ちが膨れ上がり、絹子は、そっと背後にある階段に目を向けた。
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