願いは叶う
〈 早く開いて! 〉


絹子は、何度も何度もエレベーターのボタンを押しながら、祈るように思った。


〈 早くしないと、あの女が来てしまう 〉


絹子は、わずか数秒の時間を永遠のように感じていた。


まるで時計の針が止まって、もうこのまま時は流れないのではないかと……。


絹子は恐怖に顔を歪め、振り返った。


そして絹子は、ありったけの声で悲鳴を上げた。


長い黒髪の看護師は、絹子のすぐ後ろに立っていた。


不気味な笑みを浮かべながら……。


そして長い黒髪の看護師は、青白い両腕をすっと絹子の方へと伸ばしてきた。


〈 やめて……。

どうして私なの?

あなたは、いったい誰なの? 〉


悲鳴を上げ、絶望している絹子の背後で、エレベーターのドアが開いた。


そしてそのとき、長い黒髪の看護師の手が絹子の肩に触れた。


絹子は恐ろしくて後ずさりし、エレベーターの中に転がり込んだ。


〈 早くドアを閉めなくては…… 〉


絹子は、エレベーターの中で這いつくばりながら、エレベーターの閉のボタンを押した。


エレベーターの外では、長い黒髪の看護師が、不気味な笑みを浮かべながら、絹子を見ていた。


絹子の体の震えは止まらず、絹子は、早くエレベーターのドアが閉まってくれることを願った。


しばらくして、エレベーターのドアは、ゆっくりと閉じ始めた。


〈 お願いだから、早くして! 〉


長い黒髪の看護師が、青白い両腕をすっと前の方に伸ばした。


そして絹子の方へと、一歩踏み出した。


〈 お願い……。

来ないで! 〉


絹子が目を閉じ、そう願ったとき、ようやくエレベーターのドアは閉まりきった。
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