願いは叶う
絹子の中で、再び恐怖が膨らみ始めた。


このままエレベーターが動かなければ、エレベーターのドアは、再び開いてしまうのではないか?


そしたら、あの長い黒髪の看護師、田所光江が、このエレベーターの中に入ってくるのではないか?


〈 もしあの女が、私を襲ってきたら…… 〉


絹子は泣き出しそうになりながら、夢中で一階のボタンを押した。


〈 私には、あの女に抵抗する手段が何もない…… 〉


絹子の中に、絶望が広がり始めたとき、エレベーターは、突然、動き出した。


それも、下ではなく上の方へ……。


絹子は、エレベーターが三階から四階へ、四階から五階へと移動していくのを、体を震わせながら呆然と見ていた。
< 305 / 636 >

この作品をシェア

pagetop