願いは叶う
なぜ、自分が乗っているこのエレベーターが、下ではなく上に動き出したのか、絹子には理解できなかった。


そしてエレベーターは、五階から六階へ、六階から七階へ……。


このエレベーターは、いったい何階まで行くつもりなのか?


〈 もしかしたら…… 〉


絹子は、ハッとしてそう思った。


〈 誰かが上の階で、このエレベーターを呼んだのでは? 〉


絹子はそう思い、自分を納得させた。


だって、そう考えればつじつまが合う。


エレベーターは、七階から八階、八階から最上階へと移動して、ようやく止まった。


〈 きっとこの階にエレベーターを呼んだ人がいて、その人に助けを求めさえすれば…… 〉


エレベーターのドアはゆっくりと開いていって、絹子は、エレベーターの中から外の様子をうかがった。


でも絹子の予想に反して、エレベーターの前には、誰も立っていなかった。


絹子は嫌な予感がしながらも、エレベーターの外に出た。


絹子の背後でエレベーターのドアは閉まり、薄暗い最上階の廊下に立ちすくんだ絹子は、階段の方から、またあの音を聞いた。


カツーン……。
カツーン……。


絹子はその音を耳にして、体中から血の気が引いた。


そして絹子は、その音がした方にゆっくりと目を向けた。
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