願いは叶う
絹子が目を向けたその先に、やはりあの女は立っていた。


長い黒髪の看護師、田所光江……。


彼女は不気味な笑みを浮かべながら、階段をゆっくりと上ってくる。


絹子は誰かに助けを求めようと、辺りを見まわしたが、病院の最上階は来客用のレストランになっていて、夜中には誰もいない。


それならばと、絹子は振り返り、エレベーターのドアを開けようとしたが、エレベーターは、どういうわけか最上階から下の方へと下がっていっている。


絹子は、仕方なく前を向いた。


そして再び階段の方へ目をやると、あの長い黒髪の看護師が少しずつ自分の方へ近づいてくる。


一歩……、また一歩……。


絹子は、必死に逃げ場を探した。


もう下の方へは逃げられない。


だったら、上の方へ……。


絹子はヨタヨタとよろけながら階段を上り、病院の屋上へと向かった。
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