願いは叶う
〈 逃げなくちゃ! 〉


絹子は、本能的にそう感じていた。


〈 この女、理由はわからないけど、私に悪意を持っている。

早く逃げなくては、この女に何をされるかわからない。

でも、逃げるって、どこに? 〉


病院の屋上は、中央に階段が一つあるだけで、あとは下に行けるところなど、どこにもなかった。


〈 小夜子……、私を助けて…… 〉


絹子は祈りながら、長い黒髪の看護師に背を向け走り出した。


少しでも、長い黒髪の看護師から離れるために……。


でも、絹子は走りながら、ある重大な事実に気づいていた。


自分が向かっている先は、行き止まりだって……。
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